(あらすじ)
ジェイス=ベレレンは街中の地下に埋め込まれている謎の暗号の研究にのめりこむ余り、いつの間にかニートになっていた。

ここから場面は変わり、とあるイゼット団のグループに視点が移ります。


(以下、本文の訳)

 地底街の忘れられた空間、地面の下を数時間に渡って進んだ先にあるその場所で、古いレンガの壁が光りだした。青い稲妻がレンガの端にそって踊る。古いモルタルが煙を上げて焼け焦げた。壁は部屋の内側に向かって爆発し、レンガが崩れ落ちて荒っぽい楕円形の穴が開いた。

 プレインズウォーカー、ラル=ザレックは先ほど自分があけた穴をくぐった。生焼けのような腐った空気に埃が飛び散る中、彼の篭手に取り付けられた器具が音を鳴らしながら回転し、呪文の際に残ったマナがちらついていた。
 ラルは顔をしかめて鼻に手をやった。彼はレンガをブーツで蹴飛ばすと鼻息を荒くした。「うげぇ。スクリーグ、ここが当たりの場所じゃないと俺に言ってくれ。」

 イゼット団の鎧を着込んだゴブリンが部屋に飛び跳ねて入り、両手を握り締めて周囲を見回した。そのゴブリンは荷物をまさぐりイゼット団で作られたばかりのマナ探知器具を組み立て、部屋の中で振り回していく。
「やったよ!」スクリーグが返事をした。「ここで濃度が高まってる!ここに間違いありません!」

 イゼット魔道士の集団がラルとスクリーグに続いて部屋に入り、周囲を解析呪文や錬金術の器具で調べ始めると、じめじめする霧がかった部屋が魔力のエネルギーで明るく照らされていった。

 ラルは部屋の中を進み、カーテンのように引っかかっているコケを押しのけながら崩れた古い柱へと向かった。ラルは腰を落として気味の悪い根っこに覆われた何かを調べた。彼はその塊からコケに覆われた触手をどけると身を引いた。灰色の頭蓋骨の顔が植物の間から僅かに残ったギザギザの歯を見せてこちらに笑いかけている。ラルは深呼吸をして、湧き上がる攻撃衝動を抑えこんだ。

 彼は他の者の方にに向き直った。「準備はいいか?」彼は尋ねた。「スクリーグ、マナ・コイルだ。すぐに準備しろ。」

 スクリーグはらせん状になった銅の器物を床に設置した。他のイゼットの研究者たちもその錬金術によって作られた装置を囲んで騒がしく議論を始めている。紅と蒼の宝石がアーティファクトの端で光り、すぐにブーンという音を立てた。
「間もなく準備が出来ます。」ゴブリンが言った。
「“間もなく”だと?偉大なる火想者が“間もなく”で満足されると思うのか!?」
「申し訳ありません、同志よ。しかしコイルには時間が――」
「もっといい動力源に接続したらどうなのだ」ラルが噛み付いた。「もしこの部屋に例の“力線”があるというのなら、下にマナの源があるはずだ――古いマナ源、おそらく何世紀も使われていないやつだ。」
「確かにここは深いマナの泉があります。」イゼットの他のギルド魔道士が眼を閉じて言った。
「しかしコイルがオーバーヒートします。」スクリーグが言った。「これは直接マナの泉に接続されるのです。それほどの力は――」
「マナを全部俺に向けろ。」ラルが言った。「これが捜し求めている“力線”か、俺がすぐに判別してやる。」

 部屋に続いている古代の通路の一つから虫がさざめくような音が聞こえた。イゼットの魔道士たちは凍りついた。
「そこにいるのは誰だ?」ラルが通路に向かって呼びかけた。
彼は目を凝らしたが、彼らの道具から発せられる光でも暗闇を見通すことは出来なかった。何かが砕ける音、卵の殻を陶器に叩きつけたような音が――今度はもっと騒がしく、足音が一緒だった。たくさんの足音が。

「その不自然な実験を止めろ。」暗がりから声が聞こえた。「この場所を去れ。ギルドマスターのジャラド様はこの一帯をゴルガリ団の所有物と定めておられる。」
 青白い顔をした、ドレッド風の髪のエルフと人間の小さな集団が光の中に入り込んだ。彼らの束ねた髪に編みこまれた骨の欠片と石くずが軽く音を鳴らした。キチン質の殻で作られた鎧には小さな虫が住み着いて騒がしく這いまわり、苔色に光る肩当ての部分には菌類が繁殖していた。このゴルガリ団自身がさざめくような音を出しているのか、それとも虫が鳴いているのか、ラルには分からなかった。何人かは短刀を携えているが、殆どは武器を持っていなかった――魔道士だ。


(解説)

ラル=ザレック:乳首。原文で他のメンバーたちから「サー」なんて呼ばれているのでイゼット団である程度の地位を持つようです。

スクリーグ:ラルの部下の一人のゴブリンです。敬語を使ったりラルたちと普通に議論を交わしたりと、絶対俺らより頭いい。

ちなみにここまでの範囲で「amazonから無料でDL出来るサンプル」の部分が終わりになります。

次回はイゼットvsゴルガリをプレイしながらどうぞ。

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