(あらすじ)
イゼットの不穏な動きを調べるため、ジェイスをセレズニアへと勧誘するイマーラ。
だが時既に遅し。ジェイスは身も心もニートになっていた。
ジェイス「働きたくないでござる!絶対に働きたくないでござる!」
(以下、本文の続きです。)
セレズニアの女性が建物を出る頃には、通りのランプが点き始めた。ミルコ=ヴォスクは建物の平たい屋根の上、出っ張りの近くに立ち、彼女が夜の中へと歩き去っていくのを見ていた。彼女を追跡したお陰で収穫があった、それも彼が予想しなかった形で。
ヴォスクの目は猫のように街灯の光を反射し、夕方の冷たい中だというのに彼の上半身は殆ど裸だった。彼は今までその鋭い耳で話を聞いていた煙突の穴のほうへと歩いていったが、彼女が訪れていた男からはもう何の声も聞き取れなかった。彼女はこのジェイスという名の知人の男にはっきりとした関心を示していた。彼女は彼の才能を確信していた――どうやら彼は何らかの魔道士のような存在らしい。そしてこのジェイスは、何かパターンや暗号のような物について調査を行っていると言及していた。
まさにこれこそが、ミルコ=ヴォスクの主が求めるであろう情報だった。セレズニアの女性は食欲をそそり、彼女がトロスターニへ直に接触できることは有益であった。しかしヴォスクは、彼の標的は一人ではないと感じていた。
ミルコ=ヴォスクは建物の突起から飛び降りた。彼は落ちることなく、高潔で自然な気品を漂わせて夜空へと浮かび上がっていった。
◆
イゼットの魔道士を見つけるのは難しいことではなかった。何日かの観察のあと、ジェイスは爆発音を聞き、驚いた鳥たちが街の向こう側で飛び去っていくのを見た。立ち上る青い煙はイゼット団が行った火炎技術の実験の一つを示す明白な証だ。ジェイスは爆発の元をたどり二人の魔道士を追跡した――人間とゴブリン、錬金術のための装置とミジウムの篭手を身につけていた。彼らは使われていないトンネルから現れ、焼け焦げたレンガと煙、エネルギーを受けてひび割れた道具を後に残した。これまでのジェイスが見聞きしてきた限り、これがイゼットの調査のやり方だ:何かが吹っ飛ぶまでエネルギーを加え続け、結果を観察する。
ジェイスはトンネルの入り口に隠れて、二人が通り過ぎていくのを待った。彼は精神を開き簡単に彼らの思考を簡単に洗おうと試みた。ゴブリンのスクリーグは人間の助手か、もしかすると弟子であるようだ。人間はラル=ザレックという。
「エネルギーは期待できるものでしたが、何の門が開く前兆もありませんね、」スクリーグが言った。「偉大なる火想者に何と言えばよいのでしょう?」
「それは俺に任せておけ。」
スクリーグとザレックは動き出し、早口で会話しながら大通りへと向きを変えて行ったので、ジェイスは彼らの精神の奥深くへと掘り下げて彼らが知っている全てを調べ上げることは出来なかった。代わりに、彼らを尾行して彼らに見られないようにしつつ近い距離を保とうと試みた。
「ディミーアは自分たちの門を持たないということでしょうか?」スクリーグが言った。
「それはあり得ない、」ザレックが答える。「門はある。どこかで俺達を待っている。俺達はただもっと深く調べるだけだ。」
「なぜ分かるのですか?なぜ我々が求めるものを見つけるだろうと?」
「この道は俺達のために古代の人々が作ったんだ、スクリーグ。パルンがこれを全部仕掛けたんだ、分かるか?ギルドの一つの創設者が、この地区一帯にパズルを仕掛けた、俺達に見つけてもらうために。」
「もちろんです。」スクリーグが言った。彼は耳を引っかいた。「しかしなぜそれが我々だと思うのですか?」
ザレックは鼻息を立てた。「俺達が最初に見つけたからさ。」
二人のイゼット魔道士は足早に歩き、低い声で話していたので、ジェイスは怪しまれずに、彼らと充分に近い距離を保つことが出来なかった。ジェイスは彼らとの距離を縮めるための方策を見つけなければならなかった。彼は自分の姿を見る人の精神から隠す呪文を作り出すことが出来たが、そのような呪文を維持し、同時に彼らの思考を読み取り、彼らの歩調と合わせることが出来るとは思えなかった。彼らが歩く通りと同じ階層でなければもっと近づけるかもしれない。
二人の魔道士が先へ歩く間にジェイスは身をかがめて路地裏に入り込み、フェンスを登って宿屋の屋上へと上った。彼は反対側からザレックとスクリーグを見下ろせるまで、身を潜めたまま屋根の上を忍び足で進んでいった。もう一度、彼らの表層の思考を聞き取った。残念ながら、彼は会話の一部を聞き逃してしまっていた。
「これは第一歩に過ぎない。」ザレックが言う。「ニヴ=ミゼットによると、暗号は俺達にもっと多くのことを伝えている。門を発見するだけでは足りない。門の先に何があるかを知るためには、そこへの道を見つけなければ。」
スクリーグが両手を握り締め、顔を輝かせてザレックのほうを見た。「うわぁ!何があるんだろう!」
「あいつは礼儀知らずなトカゲじじいだ。自分が知っている秘密の全てを俺に話そうとしない。だが俺は、俺達が探しているものが何か分かる気がする。」
彼らはまたジェイスから離れるように歩いていった。彼は話を聞き取るために次の建物へと深い谷間を飛び移り、傾斜した屋根へと走り、彼らの真上まで屋根の端にそって張っていかなければならなかった。今の彼らはさらに低い声で話しており、彼の内なる感覚をもってしても、彼らが話していることを把握するためにかなりの集中力を要した。
「俺はどでかい兵器だと思っているよ、スクリーグ。」ザレックが言った。「ここ第十地区に隠されている。古のギルドの創設者たちは、ギルドパクトがいつまでも続かないと分かっていた。俺が思うに、その中の一人は、もしギルドパクトが崩壊したら一つのギルドが立ち上がって他の全てのギルドを支配しなければならないと予見した。だから俺達に兵器を残したんだ、スクリーグ。そしてそれを手に取るに値する人物だけが見つけられるように隠した。“俺達こそ”がその人物だ、そう思わないか?だから、ラヴニカは俺達のものになるということだ。」
兵器・・・ジェイスは考えた。暗号、門、道、それらの全てが何かの兵器を隠している。少なくともザレックは、そう信じていた。
ジェイスはもう屋根の上から彼らの後を追う事は出来ず、彼らが通りを渡ってジェイスのいる方から離れるのを見ていた。魔道士たちは、蒸気パイプに覆われている高く殺風景な壁に囲まれた、イゼットが支配する領地の入り口に到着した。スクリーグとザレックは、かのドラゴン自身の姿を映す巨大な印章が飾られた大型の丸いゲートへと階段を上っていった。門番の部隊が彼らに頷き、ゲートは開かれて二人を受け入れた。
ゲートが開かれ、向こう側からこちらを覗き込んでいるドラゴンの頭の影を見て、ジェイスは驚愕した。それは彼らの帰還を待っているニヴ=ミゼットその人だった。
「私のために何を見つけてくれたかな?」ニヴ=ミゼットが言った。
そのドラゴンの声はジェイスの隠れている場所まで聞こえるほど大きく響いた。しかしジェイスは返答を聞くことが出来ず、二人はすぐゲートの向こう側に行ってしまった。
彼は全ての秘密の裏に何が眠っているのか、後一歩のところまで近づいていると感じていたが、厳重に警備されたイゼットのゲートに忍び込もうとすれば確実に捕まってしまう。彼は既に魔道士たちの精神との接続を失いかけていた。いずれにせよ、スクリーグとザレックは彼が求める情報の全てを持ってはいない。
しかし、あのドラゴンは持っている。彼には一つの可能性があった。ゲートが閉まる前にドラゴンの精神に侵入しなければならない・・・あえて危険を冒すのなら。
彼は実行した。
(解説)
ミルコ=ヴォスク:前回煽ったけどまだチョイ役でしたwwwサーセンwwwww
ラル=ザレック:彼の言動から、「ニヴ=ミゼットを出し抜いて俺様がラヴニカの頂点に立ってやろう」という感じの死亡フラグ・・・じゃなくて、野心があると分かります。
パルン:10個のギルドそれぞれの創設者にして、(前回イマーラが言及した)旧ギルドパクトを締結した存在。ラヴニカへの回帰時点で生存し、かつギルドマスターとしての活動が確認されているのはラクドス、ニヴ=ミゼットの2名のみ。
あと原文では場面が変わるたびに、公式PVの最初によく出てくる「プレインズウォーカーのマーク?」で区切っています。
基本的にその区切りに合わせてアップしますが、あまりに短い場合は今回のように◆で代用して分けながら、まとめて上げます。
ここまでで第一章は終わりになります。
次回は第二章、INTO THE FIREMIND
文字通り、ジェイスが火想者、ニヴ=ミゼットの精神に忍び込むところからです。
イゼットの不穏な動きを調べるため、ジェイスをセレズニアへと勧誘するイマーラ。
だが時既に遅し。ジェイスは身も心もニートになっていた。
ジェイス「働きたくないでござる!絶対に働きたくないでござる!」
(以下、本文の続きです。)
セレズニアの女性が建物を出る頃には、通りのランプが点き始めた。ミルコ=ヴォスクは建物の平たい屋根の上、出っ張りの近くに立ち、彼女が夜の中へと歩き去っていくのを見ていた。彼女を追跡したお陰で収穫があった、それも彼が予想しなかった形で。
ヴォスクの目は猫のように街灯の光を反射し、夕方の冷たい中だというのに彼の上半身は殆ど裸だった。彼は今までその鋭い耳で話を聞いていた煙突の穴のほうへと歩いていったが、彼女が訪れていた男からはもう何の声も聞き取れなかった。彼女はこのジェイスという名の知人の男にはっきりとした関心を示していた。彼女は彼の才能を確信していた――どうやら彼は何らかの魔道士のような存在らしい。そしてこのジェイスは、何かパターンや暗号のような物について調査を行っていると言及していた。
まさにこれこそが、ミルコ=ヴォスクの主が求めるであろう情報だった。セレズニアの女性は食欲をそそり、彼女がトロスターニへ直に接触できることは有益であった。しかしヴォスクは、彼の標的は一人ではないと感じていた。
ミルコ=ヴォスクは建物の突起から飛び降りた。彼は落ちることなく、高潔で自然な気品を漂わせて夜空へと浮かび上がっていった。
◆
イゼットの魔道士を見つけるのは難しいことではなかった。何日かの観察のあと、ジェイスは爆発音を聞き、驚いた鳥たちが街の向こう側で飛び去っていくのを見た。立ち上る青い煙はイゼット団が行った火炎技術の実験の一つを示す明白な証だ。ジェイスは爆発の元をたどり二人の魔道士を追跡した――人間とゴブリン、錬金術のための装置とミジウムの篭手を身につけていた。彼らは使われていないトンネルから現れ、焼け焦げたレンガと煙、エネルギーを受けてひび割れた道具を後に残した。これまでのジェイスが見聞きしてきた限り、これがイゼットの調査のやり方だ:何かが吹っ飛ぶまでエネルギーを加え続け、結果を観察する。
ジェイスはトンネルの入り口に隠れて、二人が通り過ぎていくのを待った。彼は精神を開き簡単に彼らの思考を簡単に洗おうと試みた。ゴブリンのスクリーグは人間の助手か、もしかすると弟子であるようだ。人間はラル=ザレックという。
「エネルギーは期待できるものでしたが、何の門が開く前兆もありませんね、」スクリーグが言った。「偉大なる火想者に何と言えばよいのでしょう?」
「それは俺に任せておけ。」
スクリーグとザレックは動き出し、早口で会話しながら大通りへと向きを変えて行ったので、ジェイスは彼らの精神の奥深くへと掘り下げて彼らが知っている全てを調べ上げることは出来なかった。代わりに、彼らを尾行して彼らに見られないようにしつつ近い距離を保とうと試みた。
「ディミーアは自分たちの門を持たないということでしょうか?」スクリーグが言った。
「それはあり得ない、」ザレックが答える。「門はある。どこかで俺達を待っている。俺達はただもっと深く調べるだけだ。」
「なぜ分かるのですか?なぜ我々が求めるものを見つけるだろうと?」
「この道は俺達のために古代の人々が作ったんだ、スクリーグ。パルンがこれを全部仕掛けたんだ、分かるか?ギルドの一つの創設者が、この地区一帯にパズルを仕掛けた、俺達に見つけてもらうために。」
「もちろんです。」スクリーグが言った。彼は耳を引っかいた。「しかしなぜそれが我々だと思うのですか?」
ザレックは鼻息を立てた。「俺達が最初に見つけたからさ。」
二人のイゼット魔道士は足早に歩き、低い声で話していたので、ジェイスは怪しまれずに、彼らと充分に近い距離を保つことが出来なかった。ジェイスは彼らとの距離を縮めるための方策を見つけなければならなかった。彼は自分の姿を見る人の精神から隠す呪文を作り出すことが出来たが、そのような呪文を維持し、同時に彼らの思考を読み取り、彼らの歩調と合わせることが出来るとは思えなかった。彼らが歩く通りと同じ階層でなければもっと近づけるかもしれない。
二人の魔道士が先へ歩く間にジェイスは身をかがめて路地裏に入り込み、フェンスを登って宿屋の屋上へと上った。彼は反対側からザレックとスクリーグを見下ろせるまで、身を潜めたまま屋根の上を忍び足で進んでいった。もう一度、彼らの表層の思考を聞き取った。残念ながら、彼は会話の一部を聞き逃してしまっていた。
「これは第一歩に過ぎない。」ザレックが言う。「ニヴ=ミゼットによると、暗号は俺達にもっと多くのことを伝えている。門を発見するだけでは足りない。門の先に何があるかを知るためには、そこへの道を見つけなければ。」
スクリーグが両手を握り締め、顔を輝かせてザレックのほうを見た。「うわぁ!何があるんだろう!」
「あいつは礼儀知らずなトカゲじじいだ。自分が知っている秘密の全てを俺に話そうとしない。だが俺は、俺達が探しているものが何か分かる気がする。」
彼らはまたジェイスから離れるように歩いていった。彼は話を聞き取るために次の建物へと深い谷間を飛び移り、傾斜した屋根へと走り、彼らの真上まで屋根の端にそって張っていかなければならなかった。今の彼らはさらに低い声で話しており、彼の内なる感覚をもってしても、彼らが話していることを把握するためにかなりの集中力を要した。
「俺はどでかい兵器だと思っているよ、スクリーグ。」ザレックが言った。「ここ第十地区に隠されている。古のギルドの創設者たちは、ギルドパクトがいつまでも続かないと分かっていた。俺が思うに、その中の一人は、もしギルドパクトが崩壊したら一つのギルドが立ち上がって他の全てのギルドを支配しなければならないと予見した。だから俺達に兵器を残したんだ、スクリーグ。そしてそれを手に取るに値する人物だけが見つけられるように隠した。“俺達こそ”がその人物だ、そう思わないか?だから、ラヴニカは俺達のものになるということだ。」
兵器・・・ジェイスは考えた。暗号、門、道、それらの全てが何かの兵器を隠している。少なくともザレックは、そう信じていた。
ジェイスはもう屋根の上から彼らの後を追う事は出来ず、彼らが通りを渡ってジェイスのいる方から離れるのを見ていた。魔道士たちは、蒸気パイプに覆われている高く殺風景な壁に囲まれた、イゼットが支配する領地の入り口に到着した。スクリーグとザレックは、かのドラゴン自身の姿を映す巨大な印章が飾られた大型の丸いゲートへと階段を上っていった。門番の部隊が彼らに頷き、ゲートは開かれて二人を受け入れた。
ゲートが開かれ、向こう側からこちらを覗き込んでいるドラゴンの頭の影を見て、ジェイスは驚愕した。それは彼らの帰還を待っているニヴ=ミゼットその人だった。
「私のために何を見つけてくれたかな?」ニヴ=ミゼットが言った。
そのドラゴンの声はジェイスの隠れている場所まで聞こえるほど大きく響いた。しかしジェイスは返答を聞くことが出来ず、二人はすぐゲートの向こう側に行ってしまった。
彼は全ての秘密の裏に何が眠っているのか、後一歩のところまで近づいていると感じていたが、厳重に警備されたイゼットのゲートに忍び込もうとすれば確実に捕まってしまう。彼は既に魔道士たちの精神との接続を失いかけていた。いずれにせよ、スクリーグとザレックは彼が求める情報の全てを持ってはいない。
しかし、あのドラゴンは持っている。彼には一つの可能性があった。ゲートが閉まる前にドラゴンの精神に侵入しなければならない・・・あえて危険を冒すのなら。
彼は実行した。
(解説)
ミルコ=ヴォスク:前回煽ったけどまだチョイ役でしたwwwサーセンwwwww
ラル=ザレック:彼の言動から、「ニヴ=ミゼットを出し抜いて俺様がラヴニカの頂点に立ってやろう」という感じの死亡フラグ・・・じゃなくて、野心があると分かります。
パルン:10個のギルドそれぞれの創設者にして、(前回イマーラが言及した)旧ギルドパクトを締結した存在。ラヴニカへの回帰時点で生存し、かつギルドマスターとしての活動が確認されているのはラクドス、ニヴ=ミゼットの2名のみ。
あと原文では場面が変わるたびに、公式PVの最初によく出てくる「プレインズウォーカーのマーク?」で区切っています。
基本的にその区切りに合わせてアップしますが、あまりに短い場合は今回のように◆で代用して分けながら、まとめて上げます。
ここまでで第一章は終わりになります。
次回は第二章、INTO THE FIREMIND
文字通り、ジェイスが火想者、ニヴ=ミゼットの精神に忍び込むところからです。
コメント
続きを楽しみにしています。
第一章の範囲はサンプルチャプターとして無料で公開されているからともかく、WotCの商品である小説を、引用の範囲を越えた全訳を個人で楽しむのはともかく、ネットに掲載するはさすがにまずいのではないかと思いますが…
コメント有難うございます。
彼もかつてはテゼレットとガチンコやったりエルドラージの解放に遭遇したりといろいろやらかしていますから、それに比べたら・・・?
>蛹さん
前から実際のところ迷っていたので、今ちょっと手立てを考えてています。
今後駄目そうなら他のサイトやブログなどと同程度のまとめぐらいにしておくことになりそうです。